魯山人など名品で料理が味わえる、京都屈指の日本料理店として知られる「飯田」。
店主は、飯田 真一(いいだ しんいち)氏。料理人になるなら本場京都で研鑽を積もうと決意。京都のお店のしきたりにならって、金沢にて修業後、晴れて京都の地を踏む。「和久傳」「祇園丸山」などの名店で修業を重ね、2010年「飯田」をオープンさせた。
日本人が持っている美意識を感じられるように、暦のお題になるものをやんわりと伝えられるよう熟考される飯田のコース料理。器は、魯山人の器をはじめ永楽の器など、一流の骨董品のほか大正ガラスや、現代作家のものまでが揃う。季節はもちろん、器同士の組み合わせ、そして器が料理全体の流れに沿っているかどうか・・・。絶妙な感性で構成される器と料理を堪能してほしい。
そしてもう一つ、飯田の特色であるのが心地よさを生み出す設えだ。
見えないところでのさりげないもてなしは、店に入った瞬間からに伝わるもの。それは履物を脱いで、踏み入れた第一歩の感覚から始まっている。例えば寒い冬場は、鍋島の手縫いの厚い絨毯を。夏場はひんやりとしたあじろを。ほかにも、堀ごたつの足元には緊張しないよう柔らかい材質の桐を敷いており、カウンターテーブルには、さっと水気を含んだふきんで拭きあげると芳る屋久杉が。お客さんの目に入るもの、触れるもの、お軸や料理に沿う部屋に生けるお花からお香まで、全てに行き届いている。
これらは、もてなしの精神を究極のかたちで表しているお茶事から成るものだ。
さりげないもので、居心地の良さを感じてもらえればそれでいい、と語る店主。五感全てでもてなしを感じ、静かに料理と向き合い、器を愛でる事ができる同店。確かな日本の文化に浸り、ゆったりとしたひと時を愉しもう。
writer Chie