古くから酒造のまちとして栄えてきた伏見。この地で1764年(江戸時代中期)、高級魚専門の料理屋として誕生したのが、魚三桜だ。
伏見港に揚がる鮮魚、京野菜、そして豊かな伏見の銘水「伏水」を使った京料理のお店として歴史を重ね、現在は9代目がその伝統と技を受け継いでいる。
1868年の鳥羽伏見の戦いでは、官軍の台所番を務めた。表の格子には当時の銃撃戦の弾痕が今も残る。250年余の間、時代が移り変わる様を見守ってきた魚三桜。その真髄は、「温故知新」にある。
例えば出汁の引き方。代々受け継がれた手法があったが、9代目は「江戸時代と現代では調理器具が異なる。同じ方法で、同じ味は出せない」と考え、一から見直した。現代の調理器具を使えば数分で湯が湧くため、昆布の旨みを引き出しきれないと、最適な温度と時間を研究。魚三桜では60℃に湧かしたお湯で40~50分じっくり時間をかけて出汁を引く。
器も同様だ。「ロウソクやガス灯が常だった時代より現代の方が明るいはずだ」と、現代の明るさに適し、かつ魚三桜に代々受け継がれてきた季節感を大切にした器選びを心掛ける。
先人達から受け継いだものに感謝する一方、常に物事の本質を見極め、料理から器、部屋の設えまで、今の環境やニーズに応じた選択をする。魚三桜が長年、伏見を代表する京料理のお店である所以は、ここにある。
あくなき探究心で真意を追求する9代目。歴史ある名店の味をぜひ味わってほしい。