江戸時代中期、享保年間に創業した老舗和菓子店。明治2年に発刊された、当時のガイドブック的存在「都の魁」にも、「流行りの御菓子所」と紹介されている。四条本店には人間国宝・黒田辰秋による棚や、干菓子の型などが並んでおり、店内はさながら美術館のよう。約300年の歴史をじかに見ながら、お買い物が楽しめる。
茶房の名物は、くずきり。昭和の初めには、祇園のお茶屋さんや芝居小屋に出前をしていたという。くずきりは、注文を受けてから吉野本葛粉と水だけで作る。もちっとしたコシがありながら喉ごしはつるん。沖縄の黒糖を使った、深い味わいの黒蜜との相性も最高だ。時間がたつと透明感が損なわれ、コシがなくなるため、いただけるのは店内の茶房のみ。四条本店のほか、東山エリアの高台寺店でも、くずきりなどの甘味がいただける。
お土産には、江戸時代から愛されている落雁「菊寿糖」はいかが。阿波(徳島)産の和三盆の、繊細な甘みと、なめらかな口どけはまさに極上。菊の花の形も愛らしい。
百貨店や駅ビルなどに出店していないのは、「厳選した上質な素材で、丁寧に菓子を作る」ことに徹しているからだ。長年培ってきた経験を活かし、温度や湿度で日々変わる素材の状態を見極めて菓子作りに邁進する。干菓子のほか、半生菓子、焼き菓子、生菓子いずれも高く評価されている。