京都東山の緑に包まれた清閑な地に位置し、老舗料亭として名を馳せる料亭「菊乃井」。
その歴史は古く代々、豊臣秀吉の妻・北政所が茶の湯に使った、菊水の井を守ってきた茶坊主から続くもの。大正元年(1912年)に料理屋として創業を開始したのが始まりだ。
代々受け継がれてきた伝統を守り、時代の流れを俯瞰し、あくまでも最高の技術とこれ以上のない素材をもって客人をもてなしてきた名料亭は、海外からも訪れるゲストが後を立たない。
主人は、三代目である村田 吉弘(むらた よしひろ)氏。大学在学中にフレンチを学ぶために渡仏も、そこで日本料理の地位があまりに低いことに衝撃を受けた。帰国後、日本料理を世界に認めてもらう事を胸に決意。料亭「か茂免」、実家で修行を重ねる。
三代目主人となり、啓蒙する立場となった今、本物の日本料理を世界に発信するために勤しむ日々を送る。
菊乃井の料理は、菊乃井そのものを味わい尽くすひとときのことを云うのではないだろうか。
京都の四季の風雅をはじめ、ひっそりながらも荘厳とした佇まい。景色や庭の佇まい、床の間の軸や飾られた花一つ一つにいたるまで、もてなしのための心遣いを感じ取る事ができる。その中でいただく最高の技術による、これ以上ない四季の恵み。
大人のアミューズメントパークである料亭。
普通の人が働いて、一年に一度、「美味しいもんが食べたい。」と思ったときに来てもらえる店でありたいと語る村田氏。これからも、地元京都に根付いた特別な空間として存在し続けるだろう。京都に来たら、一度は訪れておきたい料亭だ。
writer Chie